声明
2006.3.8
はじめに、お亡くなりになられた方、そしてご遺族の皆様方に深甚なる哀悼の意を捧げます。
平成十八年二月十八日、福島県立大野病院に勤務していた産婦人科医が、帝王切開中の大量出血により患者さんが死亡した件において業務上過失致死罪、および異状死の届出義務違反(医師法違反)で逮捕されました。
逮捕直後から、インターネット上で逮捕勾留という事実に対しての驚きや憤り、今後の診療上の不安など産婦人科に限らず多くの診療科の医師より意見が寄せられ、有志が集まり当グループを発足しました。三月七日時点で四百五十名を超える医師が参加しております。
この件におきましては、一年前に家宅捜索は終わり、主要な関係者の調書作成も終了しております。また福島県は事故調査を行い、報告書が作成されたうえで処分も行われております。さらに加藤医師はその後も大野病院唯一の産婦人科医として献身的に勤務し続けており、『逃亡のおそれ』『証拠隠滅のおそれ』とする福島県警の逮捕・勾留理由は到底我々には理解出来ないものであります。
前置胎盤、ならびに現在の医療水準では事前の診断が困難とされている癒着胎盤が大量出血の背景にあったということに関しまして、医学的な見地からも議論を重ねてまいりましたが、大野病院の置かれた環境、輸血供給の現状での加藤医師の判断は妥当であったと考えられます。
我々は加藤医師の不当な逮捕に対して抗議致します。
我々は日常の診療において、いかなる状況に於いても最善の医療を提供することを目標としております。病との戦いから助けるべく、持ちうる技術や能力を最大限に駆使して治療を行っております。しかし医学がこの数十年で飛躍的に発達したとはいえ、百%安全と言える薬や百%安全と言える手術はこの世に存在しません。今後いかに医学が発達しようとそれは事実として変わらないでしょう。
今回の件のように、診療上ある一定の確率で起こり得る不可避なできごとにまで責任を問われ、逮捕、起訴されるようであれば、もはや医師は危険性を伴う手術など積極的な治療を行うことは不可能となり、医療のレベルは低下の一途をたどると思われます。
地域医療への影響も大きく、既に福島県内において、今回の逮捕を契機に産婦人科医の一部病院への集約が予定されている事実は、報道に於いて既知の通りです。今後、福島県内のみならず、全国的に過疎地域における医療従事者の減少が更に加速し、結果として地域住民に対し多大な影響が及ぶことが懸念されます。
もし、この件が逮捕に相当するのであれば、今後、通常の医療業務を行っている医師の中からも相当数が逮捕されるであろうと予測されます。この状況では日本の医療は崩壊します。
このような医療の崩壊への流れを食い止めるためにも、今回の件に限らず警察や司法に適切な医学的考察にのっとった判断をしていただくよう要請致します。
加藤医師を支援するグループ 発起人
- 木田博隆
- 三重大学・公衆衛生学 ( 神経内科 )
- 神田橋宏治
- 都立駒込病院 ・化学療法科
- 網塚貴介
- 青森県立中央病院・新生児科
- 池澤孝夫
- いけざわレディースクリニック・産婦人科
- 植田良樹
- 市立長浜病院・眼科
- 大野明子
- 明日香医院・産婦人科
- 金澤信彦
- 草加市立病院・消化器内科
- 加部一彦
- 愛育病院・新生児科
- 北澤 実
- きたざわ眼科・眼科
- 小林 高
- 小林産婦人科医院・産婦人科
- 佐藤秀平
- 青森県立中央病院・産婦人科
- 高田慶応
- 大阪厚生年金病院・小児科
- 鍋島寛志
- 岩手県立磐井病院・産婦人科
- 新村 進
- 石橋総合病院・内科
- 原 崇文
- 原レディースクリニック・産婦人科
- 淵上泰敬
- 淵上整形外科・整形外科
- 船戸正久
- 淀川キリスト教病院・小児科
- 松崎 徹
- 足立クリニック・産婦人科
- 室月 淳
- 岩手医科大学・産婦人科